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June 20, 2004

Category: [映画]

北京ヴァイオリン

2002年/中国/カラー/117分
『さらば、我が愛〜覇王別姫』のチェン・カイコー監督
主人公、小春(チュン)役は本当の音楽学校生徒のタン・ユンくん
公式サイト

おおざっぱにいうと
天才的ヴァイオリニストの少年と不器用な父親の愛の物語
+ホモ+にゃんこ+家政婦は見た

物語(ネタバレっていうかほとんど話のすべて。以下反転)

 水の美しい中国の田舎町、はお屋敷の料理人リウの息子チュンは、ほとんど記憶にもない母の面影を追って形見のヴァイオリンを弾く13歳。ある日、父子のところへ知らせが届き、チュンは北京の音楽コンクールに出場することになる。
 北京へ着いた夜、駅(空港のような気も)前で父の用足しを待っている間、ベタベタするカップルを眺めるチュン。カップルの男は女から借りた札束を胸にしまうと女を置いて去って行った。女は気の強そうなそぶりであったが目には涙が溜まっていた。
 父を待っていた場所に戻ると、チュンがいないので父リウが警察を呼んでいた。素朴で田舎者でまじめで不器用な父である。そして息子を心から愛していた。

 コンクール。客席の隅に一人だらしなく寝こける男。退屈な演奏が続く中、チュンの演奏で目を開け懐かしそうに目を細める。
コンクールの結果、チュンは5位。リウはコンクール主催の音楽学校にチュンを入れたいが、北京の住民票がないと入学できない。が、誰か先生について教わる分には住民票は要らないという。
 リウはトイレの個室の中で、偶然、その学校の教師の会話を耳にする。コンクールの上位は学校への出資者で実力は皆同じようなもの。唯一良かったのが5位になったチュンだという。

 トイレから後を付けてそのチエン先生に声をかけるも無下にされるリウ。めげずにチュンをチエン先生の家に連れて再訪、しかし「本当はこの子が優勝して当然だった どんなに上手くてもダメなんだ」と、入れて貰えず。息子を讃えたり情に訴えようとしたり必至に頼み込むリウだが、チュンにはそんな父が少し恥ずかしく痛々しい。貧乏くさいし、身なりもださい。
 一方、リウはチュンの楽譜に女の写真がいっぱい挟まっているのを見てしまい、真面目ゆえ少々心を痛めたりするものの、愛ゆえに息子を信じて一生懸命。

 翌日、チエン先生のところへ再びお願いに行く。リウはチエン先生のレッスン風景を見る。どうしようもないヘタクソでやる気もない生徒とどうしようもない母親。レッスン中に大声で携帯電話で話し続ける母にぶちきれてしまい、クビになってしまうところにリウが居合わせ、なお一生懸命頼み込む。クビになったという状況の後押しもあって、チュンはチエン先生に教えてもらえることになった。

 先生が決まったことで、チュンとリウは北京のアパートを借りる。昨夜は銭湯に宿泊。アパートの庭でヴァイオリンを弾いていると、音色を聞きつけた近所のアパートの女に呼ばれ、言われるまま演奏を始めると電話がかかってきて、話の様子から女の様子が知れてきて、チェンは少し愉快。女は金のある男を口説いて貢がせているらしい。女友達から自分に気のある金持ちの話を聞いてはすぐさま電話で口説きにかかる。ていうかこの女、一昨日の夜に駅で会った女、リリだった。リリは50元渡すとチュンを帰す。

 チアン先生の家でレッスン。だけど、先生は近所のおばさんとケンカしたり、チュンに生活の世話をさせたり。部屋汚いし。仔猫の世話は丁寧だけど、レッスンは? しまいにはチュン「父は金を払っているんだ」と帰ってしまう。
 一方、リウは市場でケンカに巻き込まれいい人ぶりを発揮している間にヘソクリを隠したお気に入りの赤い帽子をすられる。消沈する父に、チュンはリリから受け取った50元を渡す。

 翌日、またチアン先生のレッスン。今日は譜面拭き。先生の昔の恋愛話を聞く。
 リウは職業紹介所の斡旋で調理場にと思ったら弁当のデリバリー隊に。
 譜面を読みながら頭の中で演奏するチュン。レコードの音が重なる。先生は今日もさっぱりまともなレッスンはしてくれなかったけど、優しかった。帰り道もウキウキでリリの家に向かう。彼氏の誕生日だというので呼ばれたのだ。
 しかし、心づくしでおめかしやケーキの用意をしたのに、男は来なかった。自分でケーキを食べ出すリリのためにチュンはヴァイオリンを弾く。

 リリの事に加えて、父にも軽く干渉され、昨日の上機嫌はどこへやら、ヴァイオリンを弾く気も起きないチュン。チエン先生に八つ当たりし、ケンカになってそのまま帰る。不機嫌なまま歩いていると、リリに会う。リリは昨日の様子と違い元気だった。そのまま誘われ、明るい気持ちで買い物につき合う。
 たくさん買い物して一休みしていると、偶然リリの男が他の女とイチャイチャしながらやってくるのに出くわし、リリとチュンでぶち壊しとく。またリリは不機嫌に。しかし、心配してついてくるチュンに対し、リリは優しかった。

 弁当を配達するリウ。仕事でやってきたホールではヴァイオリンの演奏会が行われていた。仕事を済ませてこっそりホールに入って演奏を聴いて無邪気に拍手喝采。しかし、そのバイオリニストの恩師であるユイ教授は化粧室でヴァイオリニストに「観客が拍手するのはお前が有名だからで音楽にではない 現状に甘んじ金のための演奏をするな」と苦言を呈す。その話をまた立ち聞きしてるリウ。

 チエン先生とチュンは、ケンカしながらも心を通わせあっていた。その日2人が先生の家へ入ると、リウがごちそうを用意して待っていた。チュンを買い物に行かせ、チエン先生にレッスンをやめると言う。チエン先生はタダでもいいから教えると言ってくれたが、理由は、より成功に近いユイ教授に先生を変えたいというものだった。リウはひたすら申し訳なく思い、頭を下げる。

 父の勝手な行動に怒り心頭のチュン。チエン先生を訪ねるが、先生は一人レッスン室でうなだれているばかり。
 リウはただチュンの成功をひたすら願い、一人ユイ先生に談判しに行き、人情話でまんまと落とす。
 翌日もチエン先生の家の戸を叩くチュン。それまで毎日同じ服をだらしなく着ていた先生が、今日はこざっぱりして優しく迎え入れてくれた。先生のピアノにあわせてヴァイオリンを弾く。はじめてのまともなレッスンシーンだ。
 演奏を終えて先生は
 「素晴らしいよ チュン レッスンはこれでおしまいだ
  最初に会った時にムダだと言ったのは 君のヴァイオリンのことではない
  世の中は不公平だからそれを心配したんだ
  君には何の社会的な後ろ盾もない
  父さんは正しい
  俺は君に成功を約束できない
  ユイ先生についてしっかりやるんだ」
 優しくチュンを諭す。ヴァイオリンで顔を隠して泣くチュン。

 楽器屋に入って行くチュン。次に大きなプレゼントを抱えてリリの家へ。リリはおらず、合い鍵で入ったリリの男が。プレゼントを置いて帰った後にリリ帰宅。プレゼントの中身は、男の浮気とはち合わせた日にリリが欲しがっていた高価なコート。リリはコートが男からのものだとまた騙される。

 リウにユイ先生の家へ連れていかれるチュン。しかし、チュンのヴァイオリンのケースは空だった。楽器屋で売ってしまったという。つまり、その金でコートを買った、と。チュンはその日最後までユイ先生の前で演奏することを拒んだ。
 家に帰り、暴れる父。こんなにこんなに息子のことを思っているのに、何があっても信じ続けてきたのに。女の写真の挟まった楽譜を投げ捨て、誇らしく飾っていた賞状を破り捨てる。チュンは、自分の行為に腹をたてるばかりで、自分がヴァイオリンを売るまでした気持ちを全然考えてくれない父に逆に腹を立て、泣きながら家を出る。
 辛そうなチュンを見てようやく落ち着いてきたリウが翌日楽器屋に行くと、チュンのヴァイオリンはなんと5万元もの売値がつけられていた。どうしようもなくなって、リリに事情を話すとリリも金策に奔走してくれる。しかし、リリの助けにすがる父をみつめるチュンの目は冷ややかだった。父には目もくれず、楽譜を眺めながらイメージトレーニングするチュン。不器用な父は心配そうに見つめることしかできない。

 リリは、金のあてに電話をかけまくるが、例の浮気男は電話番号を変えており、金目当ての他の男はリリを見限っていた。リリはユイ先生の授業に潜り込んで先生を捕まえ、ユイ先生をチュンのアパートに連れてきて、先生の前でチュンにヴァイオリンを弾かせる。チュンはユイ先生につくことになった。

 ユイ先生には既に1人リンという生徒がついていた。国際コンクールの選抜大会に出るのはどちらか1人だけ、と先生は言うが、どうやらチュンの方に傾いている様子でリンは面白くない。チュンにライバル心剥き出しで接してくる。チュンは、コンクールまでユイ先生の家でお世話になることになる。リウにそのことを話すと、リウはチュンの母のヴァイオリンが売れてしまっていたと話して去る。
 その夜、5万元集めて持ってきたリリにもヴァイオリンが売れてしまったことを話すリウ。小さくなったチュンの真っ赤なセーターをほぐして編み直している。手伝うリリ。「先生の家にお世話になるのは名誉なことなのに寂しくて仕方ない」というリウに「血は水よりも濃しよ」とはげますリリ。力強い一言であったがリウの表情は晴れない。

 材木づくりにビル掃除。料理人としての確かな腕を持ちながら、北京ではこんな仕事しかできないリウ。チュンがユイ先生の家にお世話になっている間に、コンクール出場費用を田舎で稼いでくることを決意。

 父と接する態度が冷たくなりがちだったチュンだが、父が田舎に帰ると聞き、心は沈む。レッスンの手を止めてしまい、コンクールに出たくなくなったと先生に言う。前ほど弾けなくなったし、というチュンに、ユイ先生は、たとえ話だと前置きして語る。
 「君の父さんは本当の父さんではなく、駅に捨てられていた。君を拾った時、君の側にはヴァイオリンがあった。君の本当の両親は音楽家だったのかも。リウさんはその気持ちをくんで君を育てた。君を育てることがリウさんの喜びだった。リウさんが君の成功をあれほどまで願うのは、捨て子だったことを引け目に思わないようにだ。その思いに応えて弾くべきだと思わないか?」
 ウソだと叫んで飛び出していくチュン。捨て子であった事実以上に、リウの気持ちに対して自分がしてしまったことがひたすら心に痛い。アパートに入ることができず、家の前で泣く。気づいて出てきた父には「父さんに会いたくなった」と言って、怒っていたことを謝る。
 そこに追ってきたユイ先生がやってきて、チュンはユイ先生の元へ戻り、リハーサルをこなす。
 選抜大会にはチュンが出ることになった。リウは選抜大会は見ずに当日田舎へ帰ることにし、前夜、リリと2人で編みあげたセーターをチュンに着せる。チュンは寂しくて仕方がないが、父は見ていられないので帰ると言う。泣いて走り去ったチュンの「僕を捨てないで」の言葉に、チュンが事実を知ってしまったことを知るリウ。リウも泣く。
 ユイ先生はリウに選抜大会のときに会場には来ないでほしい旨、喫茶店でこっそり伝えるが、リウははなからそのつもりだった。その頃、選抜大会出場をチュンに横取りされたリンは、大荒れで出ていく支度をし、チュンに、隠してあったチュンの母のヴァイオリンを見せる。チュンがコンクールに優勝したら「君のために買い戻した」と送ってチュンを独占するためにユイ先生が買って知らんぷりしていたのだという。

 選抜大会当日、夜の街をリウのセーターを着て、ヴァイオリンを抱えて走るチュン。家に戻り選抜大会会場に向かおうとするユイ先生の前にチュンは現れず、かわりに迎えたのは準備を済ませたリンだった。走るチュン。必至にリウを探す。捨てられた子供とヴァイオリンケースを抱えて必死に親を捜す13年前のリウの姿が交錯する。選抜大会のステージではリンが堂々たる演奏を始め、チュンはリリ、チエン先生に見送られようとするリウをみつけ、駆け寄り、涙を流して最高のヴァイオリンを弾く。走る13年前のリウとステージ上のリンが交錯する。清々しく演奏を終え、父と息子のハイタッチと明るい抱擁で物語は幕を閉じる。

メモ
お父さんいい人すぎ

 受け取ってもいいのに、と思う程まで、理不尽なお金は絶対に受け取らない、襤褸は着てても心は錦、というか貧乏人なりの確固とした誇りを持った人。ト音記号の赤いセーターがとても泣ける。父子物語としてはパーフェクトなお父さん。最後は結局、父さんの夢であった音楽での成功は遠のいてしまったけど、愛があれば大団円、でよろしいか。

チュン

 大人っぽく、そしてやはり子供。
 良い子だけれど父の鈍くささを少し鬱陶しく思っていて、少々下世話な趣味を持つものの田舎育ちに似合わずスマート。…という、最初は子供子供した設定から離れた描き方をされている分、後半の涙がせつない。

トイレシーン

 序盤、北京へ行く準備中、家でチュンが壷に用を足すのを後ろから父がニコニコ眺めている。
 そのすぐ後、北京に着いてすぐ、父がトイレに行っている間、駅前で待つチュン。このときリリと出会う。
 コンクールの後、父がトイレの個室でチアン先生の話を立ち聞きする。
 ユイ教授の説教も父がトイレで立ち聞きする
 トイレシーン多いよね。

チアン先生の家

 家の前の水たまり。小さいブロックを足場にして渡るがグラグラしてるのがおもしろい。

チアン先生の生徒だった太った子

 真っ赤なミッキーマウスのセーターが素敵だ。
 彼の母に教師をクビにされた後、リウに説得され、チュンに会いに外へ出たチエン先生が見たのは、待っている間大人の管弦楽アンサンブルに誘われて見事にセッションをこなすチュンの姿だった。

チアン先生の最初の教え

 第一に一生懸命 弾くこと
 第二に弾く以上は楽しんで弾くこと
 嫌々なら弾くな
 母親恋しさに弾くのもお断りだ

チアン先生の家の手洗い桶

 金魚柄でかわいぃぃぃぃぃいいい!!
 チアン先生は掃除できない人だけど、仔猫溺愛だし絶対かわいいもの好きだ。だからデブの生徒はどうでもよかったのだ!

チアン先生の昔の恋愛話

 音楽楽員の同級生だった彼女、卒業が近づいたある日、彼女は同級生の男子が彼女を好きだと言っている、とチアンに言い、チアンは祝福した。彼女はチアンが好きだったのだが、気づいた時には遅く、彼女はその同級生と結婚。離婚したと聞いたが、会っていない。
 あの日チュンが弾いた曲が、2人の別れの曲だった---
 「あの日」というのは5位になったコンクールの日だろう。その女性はチュンを捨てた母親かな?というのはにおわせといて結局描かれていないのだけれど。
 しかし、この話を聞きながらにやけるチュン。リリとの様子を見ても、こういう話題に興味津々な思春期絶好調。伊達に楽譜がグラビアの切り抜きまみれじゃないぜ。

そして、その日のレッスンで先生がお茶入れてくれて「熱いよ?」って言ったり、リンゴ丸向きしたのぶらさげて食べようとしたり、この唐突なイチャイチャぶりは何だ!萌えさせてどうする。
 最終的にこの映画がチアン先生とのラブラブ話にならなくて本当によかった、と思いながらもう覇王別姫見る気満々ですぞー。

血は水よりも濃し

 はげましのはずの言葉が逆に突き刺さる。父は力無く笑うしかない。

リンちゃんの部屋

 子供なのでマンガのポスターとかはいいが、その八神庵のポスターは何だ!
 まん中にあったのはよく見えないけどCCさくらとかかなあ。

リリさんのその後

 ユイ先生をチュンのアパートまで連れてきた後、男と絡んでそうな様子がなかったけど、いなくなったポスターのヒモ男はともかく、男遊びからは足洗えたのだろうか。

泣き所

 終盤ほとんど泣きっぱなしな気もするが
 ・チエン先生の最後のレッスン
 ・リウが北京で働く姿
 ・アパートに入れないチュン
 ・捨てないで
 ・編み直してあげたセーター!
 ・夜の街を走るチュン!と、そっから後全部

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